世界最大の民主主義国家インドの「NOTA」- インド文化圏の音楽(22)

タミル語映画「NOTA」から「Yethikka Yethikka」

映画は先週の10月5日に公開し、内容は政治サスペンスのようです。

「NOTA」は「None of the Above」の略語で「候補者リストにバツ」という意味らしい。

投票用紙の選択欄に以下のマークがあって選択できるようです。

NOTA Option Logo
By Design by: National Institute of Design,
Ahmedabad for Election Commission of India.
Designer: Prof. Tarun Deep Girdher and Rana Swarajsinh.
[CC BY-SA 4.0 ], via Wikimedia Commons

「NOTA」は「立候補者に投票に値する人がいない」という意思であり、一つの選択肢として意味を持つようです。

「NOTA」への投票数が1位になった場合には再選挙にしたり、「NOTA」に負けた候補者は今後しばらく立候補できない等々、色々な試みが行われているらしい。

歌のタイトル「Yethikka Yethikka」ですが、

ஏத்திக்க ஏத்திக்க
Ēttikka ēttikka
Get rid of
取り除く

違うと思いますが、「NOTA」に負けた候補者は「取り除/Yethikka Yethikka」ということ???

Yethikka Yethikka

歌手 Benny Dayal,Sunitha Sarathy
映画 NOTA
公開 2018年1月25日(MV)

タミル語圏の北に隣接するテルグ語バージョンもあるようです。

タミル語の地域 テルグ語の地域
Tamilspeakers Teluguspeakers
By Zakuragi [CC BY-SA 3.0 or GFDL],
via Wikimedia Commons
By Zakuragi [CC BY-SA 3.0 or GFDL],
via Wikimedia Commons

日本語の起源について日本近辺の様々な言語との比較研究がされているなか、あまりにも離れた場所のドラヴィダ語族・タミル語説というのは、なかなかロマンを感じます。

日本との文化的な類似点もあるようで、テルグ語話者の場合、米一粒一粒に女神が宿っていると考え大切にする文化があり、タミル語の場合、大野説によると約二千年前のタミル語歌集「サンガム」が和歌と同じ五七五七七韻律の形式をもっているそうです。
タミル語説は遠い過去のタミル語の稲作の言葉が日本語に似ているという話で、現在のタミル語やテルグ語が似ているということではないようですが、歌を聞いていると自然と気になってしまう。

テルグ語のタイトルでは「Yethara Yethara」となり

やったら やったら

と聞こえる。
いずれにしても「やったら」スピード感のある歌です。

Yethara Yethara

歌手 YAZIN NIZAR,SWAGATHA S. KRISHNAN
映画 NOTA
公開 2018年1月25日(MV)

映画のディレクター「Anand Shankar」の名前「Anand」も気になった。

ゴータマ・シッダールタ(ブッダ)の弟子「阿難(あなん/アーナンダ/阿難陀)」と同じです。同じインド人ですから、何ら不思議はありません。

仏教経典の始まりの文句である「如是我聞」(我はこのように聞いた)の「私」はほとんど「Anand/阿難」のようです。

「Anand/阿難」などの弟子たちが「如是我聞」の内容をまとめた集まりのことを「経典結集」と言いますが、この「結集/saṃgīti/サンギーティ」の意味は

「ともに歌うこと」

そして「Anand/阿難」の意味は

「歓喜」

ということのようです。

集まった五百人全員の記憶が一致した歌だけが残されたと言われるのが

「仏教経典」

全候補にバツを付けられるのが、世界最大の民主主義国家インドの

「NOTA」