インドネシアのやさしいPOPバラード「Untuk Apa」(何のため) - 東南アジアの音楽と言語(26)

インドネシアのやさしいPOPバラード「Untuk Apa」(何のため)

歌を作ったBembyのコメント(動画の概要欄から)

“Ketika cinta hanyalah sebatas status dan ucapan, tapi tidak lagi ada pembuktian lewat kejujuran rasa dan perbuatan”, ucap Bemby.

"When love is only limited to status and speech, but there is no proof through honesty of taste and action," said Bemby.(Google翻訳)

"愛は何もしないで言葉だけだと、誠意の気持ちと行動が感じられない"(意訳)

Untuk Apa

歌手 Maudy Ayunda
公開 2015年5月7日
歌詞翻訳サイト LyricsTranslate

歌っている「Maudy Ayunda」は子供の頃から女優や歌手として活動し、オックスフォード大学で哲学・政治・経済を学び、2015年に当時のイギリス首相キャメロンのインドネシア来日に同行したり、強制労働のような現代版奴隷制度に反対する政府機関のスポークスマンにも指名されたりしている才女のようです。

「Maudy Ayunda」は 現在まだ24歳。

歌のタイトル「Untuk Apa」の「apa」は、「何(what)」という意味。ハワイ語の「aha(何)」と語源が同じようです。

マレー・ポリネシア祖語
*apa
マレー語 インドネシア語
apa apa
中核ポリネシア祖語 ハワイ語
*afa aha

ここで面白いのが

「*apa 」→「*afa 」→「aha 」

日本語の「p」→「f」→「h」の発音変化説

例)はな(花)
[pana](パナ) → [ɸana](ファナ) →「hana」

と偶然にも同じ変遷です。

「は行」の子音は、奈良時代以前には [p] であったとみられる。すなわち、「はな(花)」は [pana](パナ)のように発音された可能性がある。[p] は遅くとも平安時代初期には無声両唇摩擦音 [ɸ] に変化していた。すなわち、「はな」は [ɸana](ファナ)となっていた。

(Wikipedia:日本語#母音・子音)

そして「Maudy Ayunda」は、 2016年にディズニーアニメ「モアナと伝説の海」のサントラ「How Far I'll Go 」のインドネシア語バージョンを歌っている。

主人公の名前「モアナ/moana」はハワイ語などポリネシア語の「moana/海」から付けたのかもしれません。

Seb'rapa Jauh Ku Melangkah
/How Far I'll Go
How Far I'll Go
歌手 : Maudy Ayunda 歌手 : Auli'i Cravalho
公開 : 2016年11月9日公開 : 2016年12月12日

ついでに歌詞の中の「kata-kata/berkata」は、

日本語の「語る(かたる)/語り(かたり)」に似てますが、意味は

単語意味
kata言葉
kata-kata 言葉(複数)
berkata 語る(to say)

そして「kata」はインド・サンスクリット語「कथा (kathā)」の借用語

言語単語意味
サンスクリット語कथा (kathā)物語り(story)
ヒンディー語कथा (kathā)物語り(story)、語り(narrative)
マラーティー語कथा (kathā) 物語り(story)
パーリ語कथा (kathā) 物語り(story)、語り(speech/talk)
マレー語kata 言葉(word)

昨日の記事『"踊れ(shake it up )"、マラーティー語の歌「Shantabai」』のマラーティー語や、上座部仏教の経典で使用されている言語パーリ語でも借用されていました。

日本語の「かた(る/り)」と関係があるのだろうか?


参考

(Wiktionary)

(Wikipedia)