讃阿弥陀仏偈 | 書き下し | 和讃(親鸞) |
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現在西方去此界 | 現に、西方この界を去ること | |
十万億刹安楽土 | 十万億刹(せつ)に、安楽土まします | |
仏世尊号阿弥陀 | 仏世尊を阿弥陀と号(なづ)けたてまつる | |
我願往生帰命礼 | われ往生せんと願じて帰命し礼したてまつる | |
成仏已来歴十劫 | 成仏よりこのかた十劫を歴たまへり | 弥陀成仏のこのかたは |
寿命方将無有量 | 寿命まさに量りあることなし | いまに十劫をへたまへり |
法身光輪遍法界 | 法身の光輪、法界にあまねくして、 | 法身の光輪きはもなく |
照世盲冥故頂礼 | 世の盲冥を照らす。ゆゑに頂礼したてまつる | 世の盲冥をてらすなり |
智恵光明不可量 | 智慧の光明、量るべからず | 智慧の光明はかりなし |
故仏又号無量光 | ゆゑに仏をまた無量光と号けたてまつる | 有量の諸相ことごとく |
有量諸相蒙光暁 | 有量の諸相、光暁(こうきょう)を蒙る | 光暁かぶらぬものはなし |
是故稽首真実明 | このゆゑに真実明を稽首したてまつる | 真実明に帰命せよ |
解脱光輪無限斉 | 解脱の光輪、限斉なし | 解脱の光輪きはもなし |
故仏又号無辺光 | ゆゑに仏をまた無辺光と号けたてまつる | 光触かぶるものはみな |
蒙光触者離有無 | 光触を蒙るもの有無を離る | 有無をはなるとのべたまふ |
是故稽首平等覚 | このゆゑに平等覚を稽首したてまつる | 平等覚に帰命せよ |
光雲無礙如虚空 | 光雲、無礙にして虚空のごとし | 光雲無碍如虚空 |
故仏又号無礙光 | ゆゑに仏をまた無礙光と号けたてまつる | 一切の有碍にさはりなし |
一切有礙蒙光沢 | 一切の有礙、光沢を蒙る | 光沢かぶらぬものぞなき |
是故頂礼難思議 | このゆゑに難思議を頂礼したてまつる | 難思議を帰命せよ |
清浄光明無有対 | 清浄の光明、対(なら)ぶものあることなし | 清浄光明ならびなし |
故仏又号無対光 | ゆゑに仏をまた無対光と号けたてまつる | 遇斯光のゆゑなれば |
遇斯光者業繋除 | この光に遇ふもの、業繋(ごうけ)除(のぞ)こる | 一切の業繋ものぞこりぬ |
是故稽首畢竟依 | このゆゑに畢竟依(ひっきょうえ)を稽首したてまつる | 畢竟依を帰命せよ |
仏光照曜最第一 | 仏光の照曜、最第一なり | 仏光照曜最第一 |
故仏又号光炎王 | ゆゑに仏をまた光炎王と号けたてまつる | 光炎王仏となづけたり |
三塗黒闇蒙光啓 | 三塗の黒闇、光啓(こうけい)を蒙る | 三塗の黒闇ひらくなり |
是故頂礼大応供 | このゆゑに大応供(だいおうぐ)を頂礼したてまつる | 大応供を帰命せよ |
道光明朗色超絶 | 道光の明朗、色を超絶したまへり | 道光明朗超絶せり |
故仏又号清浄光 | ゆゑに仏をまた清浄光と号けたてまつる | 清浄光仏とまうすなり |
一蒙光照罪垢除 | 一たび光照を蒙れば、罪垢(ざいく)除こりて | ひとたび光照かぶるもの |
皆得解脱故頂礼 | みな解脱を得。ゆゑに頂礼したてまつる | 業垢をのぞき解脱をう |
慈光遐被施安楽 | 慈光、はるかに被らしめ、安楽を施したまふ | 慈光はるかにかぶらしめ |
故仏又号歓喜光 | ゆゑに仏をまた歓喜光と号けたてまつる | ひかりのいたるところには |
光所至処得法喜 | 光の至るところ、法喜を得 | 法喜をうとぞのべたまふ |
稽首頂礼大安慰 | 大安慰を稽首し頂礼したてまつる | 大安慰を帰命せよ |
仏光能破無明闇 | 仏光、よく無明の闇を破す | 無明の闇を破するゆゑ |
故仏又号智恵光 | ゆゑに仏をまた智慧光と号けたてまつる | 智慧光仏となづけたり |
一切諸仏三乗衆 | 一切諸仏・三乗衆、 | 一切諸仏三乗衆 |
咸共歎誉故稽首 | ことごとくともに歎誉したまへり。ゆゑに稽首したてまつる | ともに嘆誉したまへり |
光明一切時普照 | 光明、一切の時にあまねく照らす | 光明てらしてたえざれば |
故仏又号不断光 | ゆゑに仏をまた不断光と号けたてまつる | 不断光仏となづけたり |
聞光力故心不断 | 光力を聞くがゆゑに、心断えずして | 聞光力のゆゑなれば |
皆得往生故頂礼 | みな往生を得。ゆゑに頂礼したてまつる | 心不断にて往生す |
其光除仏莫能測 | その光、仏を除きてはよく測るものなし | 仏光測量なきゆゑに |
故仏又号難思議 | ゆゑに仏をまた難思議と号けたてまつる | 難思光仏となづけたり |
十方諸仏歎往生 | 十方諸仏、往生を歎じ、 | 諸仏は往生嘆じつつ |
称其功徳故稽首 | その功徳を称したまへり。ゆゑに稽首したてまつる | 弥陀の功徳を称せしむ |
神光離相不可名 | 神光、相を離れたれば、名づくべからず | 神光の離相をとかざれば |
故仏又号無称光 | ゆゑに仏をまた無称光と号けたてまつる | 無称光仏となづけたり |
因光成仏光赫然 | 光によりて成仏したまへば、光赫然(かくねん)たり | 因光成仏のひかりをば |
諸仏所歎故頂礼 | 諸仏の歎じたまふところなり。ゆゑに頂礼したてまつる | 諸仏の嘆ずるところなり |
光明照曜過日月 | 光明の照曜、日月に過ぎたり | 光明月日に勝過して【13】 |
故仏号超日月光 | ゆゑに仏を超日月光と号けたてまつる | 超日月光となづけたり |
釈迦仏歎尚不尽 | 釈迦仏、歎じたまふもなほ尽きず | 釈迦嘆じてなほつきず |
故我稽首無等等 | ゆゑにわれ無等等(むとうどう)を稽首したてまつる | 無等等を帰命せよ |
阿弥陀仏初会衆 | 阿弥陀仏の初会の衆は、 | 弥陀初会の聖衆は |
声聞菩薩数無量 | 声聞・菩薩の数無量なり | 算数のおよぶことぞなき |
神通巧妙不能算 | 神通巧妙にして算ふることあたはず | 浄土をねがはんひとはみな |
是故稽首広大会 | このゆゑに広大会を稽首したてまつる | 広大会を帰命せよ |
安楽無量摩訶薩 | 安楽の無量の摩訶薩は | 安楽無量の大菩薩 |
咸当一生補仏処 | みなまさに一生にして仏処を補ふべし。 | 一生補処にいたるなり |
除其本願大弘誓 | その本願の大弘誓をもつて | 普賢の徳に帰してこそ |
普欲度脱諸衆生 | あまねくもろもろの衆生を度脱せんと欲するを除く | 穢国にかならず化するなれ |
斯等宝林功徳聚 | これらの宝林功徳聚を | |
一心合掌頭面礼 | 一心に合掌し頭面をもつて礼したてまつる。 | |
安楽国土諸声聞 | 安楽国土のもろもろの声聞は | 十方衆生のためにとて |
皆光一尋若流星 | みな光一尋にして流星のごとし。 | 如来の法蔵あつめてぞ |
菩薩光輪四千里 | 菩薩の光輪は四千里にして | 本願弘誓に帰せしむる |
若秋満月映紫金 | 秋の満月の紫金に映ずるがごとし | 大心海を帰命せよ |
集仏法蔵為衆生 | 仏の法蔵を集めて衆生のためにす | |
故我頂礼大心海 | ゆゑにわれ大心海を頂礼したてまつる | |
又観世音大勢至 | また観世音・大勢至は、 | 観音・勢至もろともに |
於諸聖衆最第一 | もろもろの聖衆において最第一なり。 | 慈光世界を照曜し |
慈光照曜大千界 | 慈光大千界を照曜し | 有縁を度してしばらくも |
侍仏左右顕神儀 | 仏の左右に侍して神儀を顕す | 休息あることなかりけり |
度諸有縁不暫息 | もろもろの有縁を度してしばらくも息まざること | |
如大海潮不失時 | 大海の潮の時を失せざるがごとし。 | |
如是大悲大勢至 | かくのごとき大悲(観音)・大勢至を | |
一心稽首頭面礼 | 一心に稽首し頭面をもつて礼したてまつる。 | |
其有衆生生安楽 | それ衆生ありて安楽に生ずれば | 安楽浄土にいたるひと |
悉具三十有二相 | ことごとく三十有二相を具す | 五濁悪世にかへりては |
智恵満足入深法 | 智慧満足して深法に入る | 釈迦牟尼仏のごとくにて |
究暢道要無障礙 | 道要を究暢して障礙なし | 利益衆生はきはもなし |
随根利鈍成就忍 | 根の利鈍に随ひて忍を成就す | |
三忍乃至不可説 | 三忍乃至不可説なり | |
宿命五通常自在 | 宿命五通つねに自在にして | |
至仏不更雑悪趣 | 仏に至るまで雑悪趣に更らず | |
除生他方五濁世 | 他方の五濁の世に生じて | |
示現同如大牟尼 | 示現して同じく大牟尼(釈尊)のごとくなるを除く | |
生安楽国成大利 | 安楽国に生じて大利を成ず | |
是故至心頭面礼 | このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる | |
安楽菩薩承仏神 | 安楽の菩薩は仏の神を承けて、 | 神力自在なることは |
於一念頃詣十方 | 一念のあひだに十方に詣る | 測量すべきことぞなき |
不可算数仏世界 | 算数すべからざる仏世界にして、 | 不思議の徳をあつめたり |
恭敬供養諸如来 | もろもろの如来を恭敬し供養したてまつる | 無上尊を帰命せよ |
花香伎楽従念現 | 華・香・伎楽、念に従ひて現じ、 | |
宝蓋幢幡随意出 | 宝蓋・幢幡、意に随ひて出づ | |
珍奇絶世無能名 | 珍奇なること世に絶れてよく名づくることなし | |
散花供養殊星宝 | 散華して殊勝の宝を供養したてまつれば、 | |
化成花蓋光晃耀 | 化して華蓋となり、光晃耀し、 | |
香気普薫莫不周 | 香気あまねく薫じてあまねからざるはなし | |
花蓋小者四百里 | 華蓋の小なるものも四百里なり | |
乃有遍覆一仏界 | すなはちあまねく一仏界を覆ふことあり | |
随其前後次化去 | その前後に随ひて次いで化し去る | |
是諸菩薩僉欣悦 | このもろもろの菩薩みな欣悦す | |
於虚空中奏天楽 | 虚空のなかにおいて天楽を奏し、 | |
雅讃徳頌揚仏恵 | 徳を雅讃し、仏慧を頌揚す | |
聴受経法供養已 | 経法を聴受して供養しをはりて、 | |
未食之前騰虚還 | いまだ食せざる前に虚に騰りて還る | |
神力自在不可測 | 神力自在にして測るべからず | |
故我頂礼無上道 | ゆゑにわれ無上道を頂礼したてまつる | |
安楽仏国諸菩薩 | 安楽仏国のもろもろの菩薩 | |
夫可宣説随智恵 | それ宣説すべきことは智慧に随ふ | |
於己万物亡我所 | おのが万物において我所を亡ず | |
浄若蓮花不受塵 | 浄きこと蓮華の塵を受けざるがごとし | |
往来進止若汎舟 | 往来進止汎べる舟のごとし | |
利安為務捨適莫 | 利安を務めとなして適莫を捨つ | |
彼己猶空断二想 | かれもおのれも空のごとくして二想を断ず | |
燃智恵炬照長夜 | 智慧の炬を燃して長夜を照らす | |
三明六通皆已足 | 三明六通みなすでに足れり | |
菩薩万行貫心眼 | 菩薩の万行心眼を貫く | |
如是功徳無辺量 | かくのごとき功徳辺量なし | |
是故至心頭面礼 | このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる | |
安楽声聞菩薩衆 | 安楽の声聞・菩薩衆、 | 安楽声聞・菩薩衆 |
人天智恵咸洞達 | 人天、智慧ことごとく洞達せり | 人・天智慧ほがらかに |
身相荘厳無殊異 | 身相の荘厳殊異なし | 身相荘厳みなおなじ |
但順他方故列名 | ただ他方に順ずるがゆゑに名を列ぬ | 他方に順じて名をつらぬ |
顔容端正無可比 | 顔容端正にして比ぶべきなし | 顔容端正たぐひなし |
精微妙躯非人天 | 精微妙躯にして人天にあらず | 精微妙躯非人天 |
虚無之身無極体 | 虚無の身無極の体なり | 虚無之身無極体 |
是故頂礼平等力 | このゆゑに平等力を頂礼したてまつる | 平等力を帰命せよ |
敢能得生安楽国 | 敢みてよく安楽国に生ずることを得れば、 | 安楽国をねがふひと |
皆悉住於正定聚 | みなことごとく正定聚に住す | 正定聚にこそ住すなれ |
邪定不定其国無 | 邪定・不定その国になし | 邪定・不定聚くにになし |
諸仏咸讃故頂礼 | 諸仏ことごとく讃じたまふ。ゆゑに頂礼したてまつる | 諸仏讃嘆したまへり |
諸聞阿弥陀徳号 | あらゆるもの、阿弥陀の徳号を聞きて、 | 十方諸有の衆生は |
信心歓喜慶所聞 | 信心歓喜して聞くところを慶び、 | 阿弥陀至徳の御名をきき |
乃曁一念至心者 | すなはち一念に曁ぶまで心を至すもの、 | 真実信心いたりなば |
廻向願生皆得生 | 回向して生ぜんと願ずればみな生ずることを得 | おほきに所聞を慶喜せん |
唯除五逆謗正法 | ただ五逆と謗正法とを除く | 若不生者のちかひゆゑ |
故我頂礼願往生 | ゆゑにわれ頂礼して往生を願ず | 信楽まことにときいたり |
一念慶喜するひとは | ||
往生かならずさだまりぬ | ||
安楽菩薩声聞輩 | 安楽の菩薩・声聞の輩、 | 安楽仏土の依正は |
於此世界無比方 | この世界において比方なし | 法蔵願力のなせるなり |
釈迦無礙大弁才 | 釈迦無礙の大弁才をもつて、 | 天上天下にたぐひなし |
設諸仮令示少分 | もろもろの仮令を設けて少分を示し、 | 大心力を帰命せよ |
最賤乞人並帝王 | 最賤の乞人を帝王に並べ、 | |
帝王復比金輪王 | 帝王をまた金輪王に比ぶ | |
如是展転至六天 | かくのごとく展転して六天に至る | |
次第相形皆如始 | 次第してあひ形すことみな始めのごとし | |
以天色像喩於彼 | 天の色像をもつてかれに喩ふるに、 | |
千万億倍非其類 | 千万億倍すともその類にあらず | |
皆是法蔵願力為 | みなこれ法蔵願力のなせるなり | |
稽首頂礼大心力 | 大心力を稽首し頂礼したてまつる | |
天人一切有所須 | 天・人一切須むるところあれば、 | 安楽国土の荘厳は |
無不称欲応念至 | 欲に称はざるはなし。念に応じて至る | 釈迦無碍のみことにて |
一宝二宝無量宝 | 一宝・二宝・無量宝、 | とくともつきじとのべたまふ |
随心化造受用具 | 心に随ひて受用の具を化造す | 無称仏を帰命せよ |
堂宇飲食悉如此 | 堂宇・飲食ことごとくかくのごとし | |
故我稽首無称仏 | ゆゑにわれ無称仏を稽首したてまつる | |
諸往生者悉具足 | もろもろの往生するもの、ことごとく | |
清浄色身無可比 | 清浄の色身を具足して、比ぶべきなし。 | |
神通功徳及宮殿 | 神通功徳および宮殿・ | |
服飾荘厳如六天 | 服飾の荘厳は六天のごとし | |
応器宝鉢自然至 | 応器の宝鉢自然に至り、 | |
百味嘉餚儵已満 | 百味の嘉餚たちまちすでに満つ | |
見色聞香意為食 | 色を見、香りを聞き、意に食せんとすれば、 | |
忽然飽足受適悦 | 忽然として飽足し適悦を受く | |
所味清浄無所着 | 味はふところ清浄にして着するところなし | |
事已化去須復現 | 事已れば化し去り、須むればまた現ず | |
晏安快楽次泥洹 | 晏安たる快楽は泥洹に次し | |
是故至心頭面礼 | このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる | |
十方仏土菩薩衆 | 十方仏土の菩薩衆 | 已今当の往生は |
及諸比丘生安楽 | およびもろもろの比丘、安楽に生ずるもの、 | この土の衆生のみならず |
無量無数不可計 | 無量無数にして計るべからず | 十方仏土よりきたる |
已生今生当亦然 | 已生・今生・当もまたしかなり | 無量無数不可計なり |
皆曾供養無量仏 | みなかつて無量の仏を供養し、 | |
摂取百千堅固法 | 百千堅固の法を摂取す | |
如是大士悉往生 | かくのごとき大士ことごとく往生す | |
是故頂礼阿弥陀 | このゆゑに阿弥陀を頂礼したてまつる | |
若聞阿弥陀仏号 | もし阿弥陀仏の号を聞きて、 | 阿弥陀仏の御名をきき |
歓喜讃仰心帰依 | 歓喜し讃仰し、心帰依すれば、 | 歓喜讃仰せしむれば |
下至一念得大利 | 下一念に至るまで大利を得 | 功徳の宝を具足して |
則為具足功徳宝 | すなはち功徳の宝を具足すとなす | 一念大利無上なり |
設満大千世界火 | たとひ大千世界に満てらん火をも | たとひ大千世界に |
亦応直過聞仏名 | またただちに過ぎて仏の名を聞くべし | みてらん火をもすぎゆきて |
聞阿弥陀不復退 | 阿弥陀を聞けば、また退かず。 | 仏の御名をきくひとは |
是故至心稽首礼 | このゆゑに心を至して稽首し礼したてまつる。 | ながく不退にかなふなり |
神力無極阿弥陀 | 神力無極の阿弥陀は、 | 神力無極の阿弥陀は |
十方無量仏所歎 | 十方無量の仏の歎じたまふところなり | 無量の諸仏ほめたまふ |
東方恒沙諸仏国 | 東方恒沙の諸仏の国、 | 東方恒沙の仏国より |
菩薩無数皆往覲 | 菩薩無数にしてみな往覲す | 無数の菩薩ゆきたまふ |
亦復供養安楽国 | また安楽国の菩薩・声聞・もろもろの大衆を供養し、 | |
菩薩声聞諸大衆 | 自余の九方の仏国も | |
聴受経法宣道化 | 経法を聴受して道化を宣ぶ | 菩薩の往覲みなおなじ |
自余九方亦如是 | 自余の九方もまたかくのごとし | 釈迦牟尼如来偈をときて |
釈迦如来説偈頌 | 釈迦如来、偈を説きて、無量の功徳を頌したまふ | 無量の功徳をほめたまふ |
無量功徳故頂礼 | ゆゑに頂礼したてまつる | |
諸来無量菩薩衆 | 諸来の無量菩薩衆 | 十方の無量菩薩衆 |
為殖徳本致虔恭 | 徳本を殖ゑんがために虔恭を致す | 徳本うゑんためにとて |
或奏天楽歌歎仏 | あるいは天楽を奏して仏を歌歎し | 恭敬をいたし歌嘆す |
或頌仏恵照世間 | あるいは仏慧の世間を照らすを頌す | みなひと婆伽婆を帰命せよ |
或以天花衣供養 | あるいは天の華・衣をもつて供養し | |
或覩浄土興等願 | あるいは浄土を覩て等願を興す | |
如是聖衆悉現前 | かくのごとき聖衆ことごとく現前し | |
蒙八梵声授仏記 | 八梵声をもつて仏記を授くるを蒙る | |
一切菩薩増願行 | 一切の菩薩願行を増す | |
故我頂礼婆伽婆 | ゆゑにわれ婆伽婆を頂礼したてまつる | |
聖主世尊説法時 | 聖主世尊(阿弥陀仏)説法の時 | 七宝講堂道場樹 |
大衆雲集七宝堂 | 大衆七宝の堂に雲集す | 方便化身の浄土なり |
聴仏開示咸悟入 | 仏の開示を聴きてことごとく悟入し | 十方来生きはもなし |
歓喜充遍皆得道 | 歓喜充遍してみな道を得 | 講堂道場礼すべし |
于時四面起清風 | 時に四面より清風起り | |
撃動宝樹出妙響 | 宝樹を撃動して妙響を出す | |
和韻清徹過糸竹 | 和韻清徹にして糸竹に過ぎ | |
踰於金石無倫比 | 金石に踰えて倫比なし | |
天花繽紛逐香風 | 天華繽紛として香風を逐ひ | |
自然供養常不息 | 自然の供養つねにして息まず | |
諸天復持天花香 | 諸天また天の華香を持し | |
百千伎楽用致敬 | 百千の伎楽もつて敬ひを致す | |
如是功徳三宝聚 | かくのごとき功徳三宝の聚なり | |
故我運想礼講堂 | ゆゑにわれ想を運らして講堂を礼したてまつる | |
妙土広大超数限 | 妙土広大にして数限を超ゆ | 妙土広大超数限 |
自然七宝所合成 | 自然の七宝をもつて合成するところなり | 本願荘厳よりおこる |
仏本願力荘厳起 | 仏の本願力より荘厳起る | 清浄大摂受に |
稽首清浄大摂受 | 清浄大摂受を稽首したてまつる | 稽首帰命せしむべし |
世界光曜妙殊絶 | 世界光曜すること妙にして殊絶す | 自利利他円満して【35】 |
適悦晏安無四時 | 適悦晏安として四時なし | 帰命方便巧荘厳 |
自利他利力円満 | 自利他利の力円満したまふ | こころもことばもたえたれば |
帰命方便巧荘厳 | 方便巧荘厳を帰命したてまつる | 不可思議尊を帰命せよ |
宝地澄静平如掌 | 宝地澄静にして平らかなること掌のごとく | |
無有山川陵谷阻 | 山・川・陵・谷の阻あることなし | |
若仏神力須則見 | もし仏の神力をもつて須むればすなはち見る | |
稽首不可思議尊 | 不可思議尊を稽首したてまつる | |
道樹高四百万里 | 道樹の高さ四百万里 | |
周囲由旬有五千 | 周囲由旬五千あり | |
枝葉布里二十万 | 枝葉布くこと里二十万なり | |
自然衆宝所合成 | 自然の衆宝をもつて合成するところなり | |
月光摩尼海輪宝 | 月光摩尼・海輪宝 | |
衆宝之王而荘厳 | 衆宝の王をもつて荘厳す | |
周匝垂間宝瓔珞 | 周匝してあひだに垂るる宝の瓔珞は | |
百千万種色変異 | 百千万種の色に変異す | |
光焔照曜超千日 | 光焔照曜すること千日に超え | |
無極宝網覆其上 | 無極の宝網その上に覆へり | |
一切荘厳随応現 | 一切の荘厳随ひて応現す | |
稽首頂礼道場樹 | 道場樹を稽首し頂礼したてまつる | |
微風吹樹出法音 | 微風、樹を吹きて法音を出し、 | |
普流十方諸仏刹 | あまねく十方諸仏の刹に流る | |
聞斯音得深法忍 | この音を聞くもの深法忍を得 | |
至成仏道不遭苦 | 仏道を成ずるに至るまで苦に遭はず | |
神力広大不可量 | 神力広大にして量るべからず | |
稽首頂礼道場樹 | 道場樹を稽首し頂礼したてまつる | |
樹香樹色樹音声 | 樹香・樹色・樹音声・ | |
樹触樹味及樹法 | 樹触・樹味および樹法 | |
六情遇者得法忍 | 六情遇へば法忍を得 | |
故我頂礼道場樹 | ゆゑにわれ道場樹を頂礼したてまつる | |
蒙道場樹対六根 | 道場樹の六根に対するを蒙り | |
乃至成仏根清徹 | すなはち成仏に至るまで根清徹なり | |
音響柔順無生忍 | 音響・柔順・無生忍 | |
随力浅深咸得証 | 力の浅深に随ひてことごとく証を得 | |
此樹威徳所由来 | この樹の威徳の由来するところ | |
皆是如来五種力 | みなこれ如来(阿弥陀仏)五種の力なり | |
神力本願及満足 | 神力と本願および満足と | 神力本願及満足 |
明了堅固究竟願 | 明了と堅固と究竟願となり | 明了堅固究竟願 |
慈悲方便不可称 | 慈悲方便称るべからず | 慈悲方便不思議なり |
帰命稽首真無量 | 真無量を帰命し稽首したてまつる | 真無量を帰命せよ |
従世帝王至六天 | 世の帝王より六天に至るまで | |
音楽転妙有八種 | 音楽うたた妙にして八種あり | |
展転勝千億万倍 | 展転して勝るること千億万倍 | |
宝樹音麗倍亦然 | 宝樹の音の麗しきこと倍してまたしかなり | 宝林・宝樹微妙音 |
復有自然妙伎楽 | また自然の妙なる伎楽あり | 自然清和の伎楽にて |
法音清和悦心神 | 法音清和にして心神を悦ばしめ | 哀婉雅亮すぐれたり |
哀婉雅亮超十方 | 哀婉雅亮にして十方に超ゆ | 清浄楽を帰命せよ |
故我稽首清浄楽 | ゆゑにわれ清浄楽を稽首したてまつる | |
七宝樹林周世界 | 七宝の樹林世界にあまねし | 七宝樹林くににみつ |
光耀鮮明相映発 | 光耀鮮明にしてあひ映発す | 光耀たがひにかがやけり |
花菓枝葉更互為 | 華・菓・枝・葉たがひになる | 華菓枝葉またおなじ |
稽首本願功徳聚 | 本願功徳聚を稽首したてまつる | 本願功徳聚を帰命せよ |
清風時時吹宝樹 | 清風時々に宝樹を吹くに | 清風宝樹をふくときは |
出五音声宮商和 | 五の音声を出して宮商和す | いつつの音声いだしつつ |
微妙雅曲自然成 | 微妙の雅曲自然に成ず | 宮商和して自然なり |
故我頂礼清浄勲 | ゆゑにわれ清浄勲を頂礼したてまつる | 清浄勲を礼すべし |
其土広大無崖際 | その土広大にして崖際なく | |
衆宝羅網遍覆上 | 衆宝の羅網あまねく上に覆へり | |
金縷殊璣奇異珍 | 金縷珠璣、奇異の珍、 | |
不可名宝為挍飾 | 不可名の宝をもつて校飾となす | |
周匝四面垂宝鈴 | 四面に周匝して宝鈴を垂る | |
調風吹動出妙法 | 調風吹き動かして妙法を出す | |
和雅徳香常流布 | 和雅の徳香つねに流布せり | |
聞者塵労習不起 | 聞くもの塵労の習起らず | |
此風触身受快楽 | この風身に触るれば快楽を受くること | |
如比丘得滅尽定 | 比丘の滅尽定を得るがごとし | |
風吹散花満仏土 | 風吹きて華を散らし、仏土に満つ | |
随色次第不雑乱 | 色の次第に随ひて雑乱せず | |
花質柔軟列芬芳 | 華質柔軟にして列芬芳たり | |
足履其上下四指 | 足その上を履むに下ること四指 | |
随挙足時還如故 | 足を挙ぐる時に随ひてまた故のごとし | |
用訖地開没無遺 | 用ゐをはれば地開け、没して遺ることなし | |
随其時節花六返 | その時節に随ひて華六返す | |
不可議報故頂礼 | 不可議の報なり。ゆゑに頂礼したてまつる | |
衆宝蓮花盈世界 | 衆宝の蓮華世界に盈つ | 一々のはなのなかよりは |
一一花百千億葉 | 一々の華に百千億の葉あり | 三十六百千億の |
其葉光明色無量 | その葉の光明の色無量なり | 光明てらしてほがらかに |
朱紫紅緑間五色 | 朱・紫・紅・緑五色に間はり | いたらぬところはさらになし |
煒燁煥爛曜日光 | 煒燁煥爛として日光より曜く | |
是故一心稽首礼 | このゆゑに一心に稽首し礼したてまつる | |
一一花中所出光 | 一々の華のなかより出すところの光 | 一々のはなのなかよりは |
三十六百有千億 | 三十六百有千億なり | 三十六百千億の |
一一花中有仏身 | 一々の華のなかに仏身あり | 仏身もひかりもひとしくて |
多少亦如所出光 | 多少また出すところの光のごとし | 相好金山のごとくなり |
仏身相好如金山 | 仏身の相好金山のごとし | |
一一又放百千光 | 一々また百千の光を放ち | 相好ごとに百千の |
普為十方説妙法 | あまねく十方のために妙法を説き | ひかりを十方にはなちてぞ |
各安衆生於仏道 | おのおの衆生を仏道に安んず | つねに妙法ときひろめ |
如是神力無辺量 | かくのごとき神力辺量なし | 衆生を仏道にいらしむる |
故我帰命阿弥陀 | ゆゑにわれ阿弥陀を帰命したてまつる | |
楼閣殿堂非工造 | 楼閣・殿堂工の造にあらず | 七宝の宝池いさぎよく |
七宝彫綺化所成 | 七宝の彫綺化してなるところなり | 八功徳水みちみてり |
明月殊璫交露漫 | 明月・珠璫、交露の縵あり | 無漏の依果不思議なり |
各有浴池形相称 | おのおの浴池あり、形あひ称ふ | 功徳蔵を帰命せよ |
八功徳水満池中 | 八功徳の水池のなかに満てり | |
色味香潔如甘露 | 色味香潔にして甘露のごとし | |
黄金池者白銀沙 | 黄金の池には白銀の沙あり | |
七宝池沙互如此 | 七宝の池の沙たがひにかくのごとし | |
池岸香樹垂布上 | 池岸の香樹上に垂れ布き | |
栴檀芬馥常流馨 | 栴檀芬馥としてつねに馨りを流す | |
天花彩璨為映飾 | 天華彩璨として映飾をなす | |
水上熠燿若景雲 | 水上熠燿として景雲のごとし | |
無漏依果難思議 | 無漏の依果、思議しがたし | |
是故稽首功徳蔵 | このゆゑに功徳蔵を稽首したてまつる | |
菩薩声聞入宝池 | 菩薩・声聞宝池に入れば | |
随意浅深如所欲 | 意に随ひて浅深欲するところのごとし | |
若須灌身自然注 | もし身に灌がんと須むれば、自然に注ぐ | |
欲令旋復水尋還 | 旋復せしめんと欲すれば、水すなはち還る | |
調和冷暖無不称 | 調和冷暖にして称はざるはなし | |
神開体悦蕩心垢 | 神開け体悦びて、心垢を蕩かす | |
清明澄潔若無形 | 清明澄潔にして形なきがごとし | |
宝沙映徹如不深 | 宝沙映徹して深からざるがごとし | |
澹淡廻転相注灌 | 澹淡として回転りてあひ注灌す | |
嬋約容予和人神 | 嬋約容予にして人の神を和らぐ | |
微波無量出妙響 | 微波無量にして妙響を出す | |
随其所応聞法語 | その所応に随ひて法語を聞く | |
或聞三宝之妙章 | あるいは三宝の妙章を聞き、 | |
或聞寂静空無我 | あるいは寂静・空・無我を聞き、 | |
或聞無量波羅密 | あるいは無量の波羅蜜・ | |
力不共法諸通恵 | 力・不共法・諸通慧を聞き | |
或聞無作無生忍 | あるいは無作・無生忍 | |
乃至甘露灌頂法 | 乃至甘露灌頂の法を聞く | |
随根性欲皆歓喜 | 根の性欲に随ひてみな歓喜す | |
順三宝相真実義 | 三宝の相と真実の義に順ひて | |
菩薩声聞所行道 | 菩薩・声聞の所行の道 | |
於是一切悉具聞 | ここにおいて一切ことごとくつぶさに聞く | |
三塗苦難名永閉 | 三塗苦難の名永く閉ぢ | 三塗苦難ながくとぢ |
但有自然快楽音 | ただ自然快楽の音のみあり | 但有自然快楽音 |
是故其国号安楽 | このゆゑにその国を安楽と号く | このゆゑ安楽となづけたり |
頭面頂礼無極尊 | 頭面をもつて無極尊を頂礼したてまつる | 無極尊を帰命せよ |
本師龍樹摩訶薩 | 本師龍樹摩訶薩 | |
誕形像始理頽綱 | 形を像始に誕じて頽綱を理へ | |
関閉邪扇開正轍 | 邪扇を関閉して正轍を開く | |
是閻浮提一切眼 | これ閻浮提の一切の眼なり | |
伏承尊悟歓喜地 | 伏して承るに尊(龍樹)、歓喜地を悟りて、 | |
帰阿弥陀生安楽 | 阿弥陀に帰して安楽に生ぜり | |
譬如竜動雲必随 | たとへば龍動けば雲かならず随ふがごとし | |
閻浮提放百卉舒 | 閻浮提に百卉を放ち舒ぶ | |
南無慈悲龍樹尊 | 南無慈悲龍樹尊 | |
至心帰命頭面礼 | 心を至し帰命し頭面をもつて礼したてまつる | |
我従無始循三界 | われ無始より三界に循りて | |
為虚妄輪所廻転 | 虚妄輪のために回転せらる | |
一念一時所造業 | 一念一時に造るところの業 | |
足繋六道滞三塗 | 足六道に繋がれ三塗に滞まる | |
唯願慈光護念我 | ただ願はくは慈光、われを護念して、 | |
令我不失菩提心 | われをして菩提心を失せざらしめたまへ | |
我讃仏恵功徳音 | わが仏慧功徳を讃ずる音 | 仏慧功徳をほめしめて |
願聞十方諸有縁 | 願はくは十方のもろもろの有縁に聞かしめて | 十方の有縁にきかしめん |
欲得往生安楽者 | 安楽に往生することを得んと欲するもの | 信心すでにえんひとは |
普皆如意無障礙 | あまねくみな意のごとくにして障礙なからしめん | つねに仏恩報ずべし |
所有功徳若大少 | あらゆる功徳もしは大少 | 信心歓喜慶所聞【47】 |
廻施一切共往生 | 一切に回施してともに往生せん | 乃曁一念至心者 |
南無不可思議光 | 不可思議光に南無し | 南無不可思議光仏 |
一心帰命稽首礼 | 一心に帰命し稽首して礼したてまつる | 頭面に礼したてまつれ |
十方三世無量恵 | 十方三世の無量慧 | 十方三世の無量慧 |
同乗一如号正覚 | 同じく一如に乗じて正覚を号したまふ | おなじく一如に乗じてぞ |
二智円満道平等 | 二智円満して道平等なり | 二智円満道平等 |
摂化随縁故若干 | 摂化縁に随ふがゆゑに若干なり | 摂化随縁不思議なり |
我帰阿弥陀浄土 | われ阿弥陀の浄土に帰するは | 弥陀の浄土に帰しぬれば |
即是帰命諸仏国 | すなはちこれ諸仏の国に帰命するなり | すなはち諸仏に帰するなり |
我以一心讃一仏 | われ一心をもつて一仏を讃ず | 一心をもちて一仏を |
願遍十方無礙人 | 願はくは十方無礙人にあまねからん | ほむるは無碍人をほむるなり |
如是十方無量仏 | かくのごとき十方無量の仏 | |
咸各至心頭面礼 | ことごとくおのおの心を至して頭面をもつて礼したてまつる | |
讃一百九十五 | 讃は一百九十五 | |
礼五十一拝 | 礼は五十一拝。 |
参考サイト
曇鸞(Wikipedia)
讃阿弥陀仏偈 曇鸞法師作(Wikisource)
讃阿弥陀仏偈(labo.wikidharma)