インドは「サラスヴァティー」と「ルドラ」の国 ?!- インド文化圏の音楽(7)

映画「Bajrangi Bhaijaan」から「Tu Jo Mila」のつづき。

歌詞から

私の水と食べ物

Aab-o-daana mera

My water and food

「水/Aab」の源について。

パンジャーブ地方の名前が、ペルシャ語由来での5つの川(水)ということを前回調べましたが、古くベーダ時代は「7つの川(Sapta Sindhavah/シンドゥ七大河/seven rivers)」と呼ばれていて、パンジャーブと呼ばれるようになったのは、イスラム勢力がインドに侵入してくる12世紀以降のようです。
7つの川の場所は、日本人に馴染みのある「ガンダーラ」から「クルクシェートラ」まで。
下の地図で「7つの川/Sapta Sindhavah」は「Gandhari」から「Kuru」
Map of Vedic India.png
By Dbachmann, CC BY-SA 3.0, Link

(Wikipedia:History of the Punjab/Rigvedic rivers)


インド、インダス、ヒンドゥー、ヒンディーの元の意味は「川」!!

サンスクリット語で「川」を意味する「シンドゥー/Sindhu」が、インド、インダス、ヒンドゥー、ヒンディーの語源にもなっているようです。

各時代・場所・言語での「インダス川」の呼び方

時代・場所・言語 呼び方 コメント
サンスクリット シンドゥー Sindhu 川(河)・流れ・海
古代ペルシア語 ヒンドゥー(シュ) Hindu(š) 川辺の人たち
アッシリア シンダ Sinda
古代ギリシア語 インドス Ἰνδός ヘロドトス『歴史』
古代ローマ シンドゥス Sindus
ラテン語 インダス Indus
イスラム教徒 ヒンドゥー

(Wikipedia:インダス川/シンドゥ七大河/シンド州/ヒンドゥスターン)

「リグ・ヴェーダ」時代に「7つの川」の中で最も敬われていたのが、サラスヴァティー川のようです。ただし現在はサラスヴァティーという名前の川はないらしい。(Wikipedia:サラスヴァティー川)

その名前「サラスヴァティー」とは、サンスクリットで「水(湖)を持つもの」という意味。

水の神として神格化され、やがて、

流れる川が転じて、流れるもの全て(言葉・弁舌や知識、音楽など)の女神となった。

…サンスクリットとそれを書き記すためのデーヴァナーガリー文字を創造したとされる。

(Wikipedia:サラスヴァティー)

「サラスヴァティー」は

」を「言葉(詩)」で「歌って讃える

の各要素を神格化したと考えれば分かり易い。

ちなみに日本には弁才天となって伝わってきました。

(Wikipedia:弁才天)


バラタ族が「7つの川」地方に侵入する前に文明がありました。

それが「インダス文明」

別に「サラスヴァティー」を付けて呼ばれることもあるようです。

英語 翻訳
Sarasvati culture サラスヴァティー文化
Sarasvati Civilisation サラスヴァティー文明
Indus-Sarasvati Civilisation インダス・サラスヴァティー文明
Sindhu-Saraswati Civilisation シンドゥー・サラスヴァティー文明

(Wikipedia:Indus Valley Civilisation)

この文明の最大の特徴が「市民社会」

エジプトやメソポタミアは、贅を尽くした王と神の建造物に象徴される「王族社会」ですが、「インダス文明」は市民用の建造物が一番立派だったそうです。

その担い手になっていたのが、ムンダ族やドラヴィダ族ではないかと言われています。

ムンダ族やドラヴィダ族は農耕牧畜民族で、女系社会であり、宗教的には女神・リンガ・蛇神・樹木などを崇拝していたようです。

なお「7つの川の市民文明」が滅亡した理由は諸説あって断定できないようです。

当時のドラヴィダ族が移動したのか分かりませんが、現在ドラヴィダ語族は南インドに住んでいます。

(Wikipedia:インダス文明)

インダス文明の都市群と領域 現在のドラヴィダ語族
IVC Map Dravidische Sprachen
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そこで今回はドラヴィダ語のテルグ語映画ソング「Gudilo Badilo Madilo Vodilo」

この歌はリリース前にブラフミン階級から「ルドラ」の讃歌を侮辱するとして、いくつかの言葉を削除するように抗議があったようです。

「サラスヴァティー」が水(川)の神に対して、「ルドラ」は大地を潤すモンスーン(雨)の神。

インドの農業を支えているのが「モンスーン」であり、インド諸言語の「年」はサンスクリット語の「雨」(ヴァルシャ)を語源にしている場合が多いようです。

「一年」は「一雨(モンスーン)」と考えるくらい「モンスーン(雨)」が大事だということでしょう。

「モンスーン(雨)」到来の知らせが、蛙の鳴き声だったようです。

彼らは第12月の神聖な掟を守る。これらの紳士(蛙)はかつて季節をあやまたず。

一年の終わりて、雨季の到来するとき、苦熱は終結す。

(7・103・9、辻訳)

ルドラは動詞「rud/泣く」の名詞化「叫ぶ者/泣く者」という意味。まさかモンスーンを知らせる「鳴く蛙」のこと?(妄想?)

インドは水(川)の神「サラスヴァティー」とモンスーン(雨)の神「ルドラ」の国?!

ルドラについては、リグ・ベーダ時代は1度だけ「吉祥な(シヴァ)モンスーン(ルドラ)」と形容され、時代と共に、度々「吉祥なモンスーン(シヴァなルドラ)」となっていったようです。

その後「シヴァ」が独立?して神となり「シヴァ」が立場を上げたために、「ルドラ」は「シヴァ」の化身になったらしい。

(参考)
Wikipedia:ルドラ/Shri Rudram Chamakam
ちくま新書:「古代インドの思想ー自然・文明・宗教」(山下博司著)

歌詞のサビ(翻訳サイトを参考に意訳)

Madilo vodilo badilo gudilo
మడిలో ఒడిలో బడిలో గుడిలో
In my heart , in my lap, at the school, at the temple
Nee thalape shasivadhana
నీ తలపే శశివదనా
I'm thinking only about you
Gadhilo madhilo yedhalo sodhalo
గదిలో మదిలో ఎదలో సొదలో
In my bed(room), in my heart, in my mind, in my thoughts
Neeve kadha gajja gaamana
నీవెకదా గజగమనా
Only you, anywhere

※「lap」とは「laptop computer/ノートパソコン」のことか?

※「lap」の意味は一般的に「ひざ」

Gudilo Badilo Madilo Vodilo

歌手 MLR Karthikeyan & Chitra
映画 DJ Duvvada Jagannadham (Wikipedia)
公開 2017年6月23日

歌詞翻訳サイト jayatejam
quora.com
テルグ語 chaibisket

Tu Jo Mila

歌手 K.K.
映画 Bajrangi Bhaijaan (Wikipedia)
公開 2015年

映像

歌詞