ドイツ語の非合理性を楽しんでみたい。
ドイツは”合理主義の国”というのが一般的な見方だと思っていましたが、ドイツ語の人称代名詞を学んでいるうちに、とても”合理的”とは思えない言葉に驚きました。下記の表を見て最も非合理なのが「ihr(イーア)」です。「ihr(イーア)」だけでは「君たちは」か「彼女に」か「所有冠詞」か判別が難しい。
私 | 君 | 私たち | 君たち | 彼 | 彼女 | それ | 複数 | あなた(がた) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
主格 | ~は | ich | du | wir | ihr | er | sie | es | sie | Sie |
所有冠詞 | ~の | mein | dein | unser | euer | sein | ihr | sein | ihr | Ihr |
間接目的語 | ~に | mir | dir | uns | euch | ihm | ihr | ihm | ihnen | Ihnen |
直接目的語 | ~を | mich | dich | uns | euch | ihn | sie | es | sie | Sie |
ドイツは経済では世界でもトップクラスの合理性を発揮しているけど、言語の最も重要だと思われる人称を混乱する関係にしたのは何故なのか?不思議で面白く感じます。
理由はあったと思うけど、それも遥か昔の話で解明できていないかもしれないので、想像を巡らせる浪漫がありそう。
以前は「ihr・ihm・ihn」(イーア・イーム・イーン)をキーワードにして覚え方を考えたりしました。(【ドイツ語】歌詞の意味を知るために(5)-人称代名詞の格変化の覚え方)
今回は「組み分け」に着目してみたいと思います。
1.「私」と「君」と「私たち」と「君たち」
私 | 君 | 私たち | 君たち | |
---|---|---|---|---|
主格 | ich | du | wir | ihr |
間接目的語 | mir | dir | uns | euch |
直接目的語 | mich | dich | uns | euch |
なんとなく文字または発音が英語から類推できそう。
「君たち」の「ihr・euch・euch」(イーア・オイヒ・オイヒ)がちょっと英語から遠い。
2.「彼女」と「3人称複数」と「あなた(がた)」
彼女 | 3人称複数 | あなた(がた) | |
---|---|---|---|
主格 | sie | sie | Sie |
間接目的語 | ihr | ihnen | Ihnen |
直接目的語 | sie | sie | Sie |
「ihr」以外は発音が同じ
この組み合わせは、森の民であった狩猟採集時代を想定し、大地母神が祀られていて、女性(彼女)は巫女で、「彼ら」は神々、あなた(がた)は敬称ですから神々を示すと考え、森の神話の世界で神々が「ジー」と呼ばれていたと空想して組み合わせてみました。全くのフィクション独自説です。
さらに「sieg」は「勝利」、ゲルマン神話の「Siegfried(ジークフリート)」の名前は「勝利(sig)」と「平和(frithu)」で成り立っていて中高ドイツ語ではジーフリト (Sîfrit) ともいうそうです。
つまり「ジー」は「勝利」であり神話の名前にも使われていたそうなので、古代の人々のコミュニケーションを思うと神々との対話の方が多かったと考えてみました。古代のドイツはイデオロギー社会の「私の正義(勝利)」ではなく、神々である「彼女」「かれら」「あなた(たち)」の摂理(勝利)に寄り添い、神々に囲まれ神々を崇めていた社会だと空想してみました。
ジークフリート (名前) - Wikipedia
ジークフリート (神話) - Wikipedia
3.「彼」と「それ」
彼 | それ | |
---|---|---|
主格 | er | es |
間接目的語 | ihm | ihm |
直接目的語 | ihn | es |
「ihn」が「er」だったらと思うところ。
この組み合わせは2個の単語によります。「erreichen(到達する)」と「essen(食べる)」
まず「erreichen」ですが、語源は「er+reichen」で「er」は「獲得」、「reichen」は「足りる」を意味するようです。(参考:erreichen - ウィクショナリー日本語版)
しかし、ここではあえて「er(r)+eichen」に分けてみる。理由は「eichen」が樫の木であることです。この樫の木は古代ヨーロッパ社会の生命の木ともいえる大切な木であったそうです。
Wikipediaの「クリスマスツリー」でもドイツ人の樫の木信仰について述べられていました。
クリスマスツリーはキリストとはおよそ無関係である。原型は北欧に住んでいた古代ゲルマン民族の「ユール」という冬至の祭で使われていた樫の木である。冬でも葉を枯らさずにいる樫は生命の象徴とされていた。このドイツの民をキリスト教に改宗させる試みがなされたが、樹木信仰が根強かったので、樫を樅(モミ)に変えることでキリスト教化した。(Wikipedia - クリスマスツリー:歴史) |
ここから「er(r)+eichen」を「獲得+樫(の実)」と考えて、そのあと樫の実を「essen(食べる)」とします。この「essen」を「es(s)+en(語尾)」に分けみると、「er」と「es」の出来上がり。「ジー」は森の神々、「er」は樫の実を「獲得」、「es」はその実を「es(sen)食べる」と連想し、古代ドイツを空想した組み合わせでした。
歌は大地母神ガイア「Gäa」、歌うのはシンガーソングライター「Oonagh(ウーナー)」
Gäa (大地母神ガイア)
歌手 : Oonagh (Wikipedia) 公開 : 2014年1月25日
歌詞翻訳サイト : LyricsTranslate